大切な写真データの長期保存方法

デジタル一眼レフで撮り溜めた写真や動画、フィルムをスキャンしてデジタル化した写真など、大切なデジタルデータを『長期間、確実に保存する方法』をご紹介します!

1.バックアップとアーカイブ

 

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まず最初に、バックアップとアーカイブの違いについて説明します。バックアップとは、万が一PC(パソコン)のデータが消えてしまっても、データをすぐに元に戻せるように、あらかじめ別の媒体、例えば外付けHDDなどにデータを複製しておくことを言います。  ですので、バックアップデータは常に上書き更新されることになります。

それに対してアーカイブとは、長期にわたってデータを保存、活用することを指しています。長期にわたって保存されるべきデータですので、一度アーカイブされたデータに上書きすることはありません。

デジタル一眼レフで撮った写真のRAWデータファイルのサイズは、1枚で数十MB程度になります。これが千枚単位にもなると、PC内のHDDの容量を圧迫する事になりますし、PCが壊れた際の被害も甚大ですから、外付けHDDなどにデータを移動させている方もいらっしゃると思います。

もちろん長期にわたって保存、活用するための貴重な写真データですから、外付けHDD1台だけでは不安です。更にSDカードなどの半導体メモリにも同じデータを保存されている方もいらっしゃるでしょう。

まさにこれが『アーカイブ』です。

フィルムのビネガーシンドロームや退色などの劣化は、アナログ的に徐々に進行するものですが、デジタルデータは、下手をすると一瞬にして全てのデータが無くなってしまうという危険性を常に持っています。
 HDDにスティクションが発生した時や、静電気によりSDカードが破壊された時などがこれに相当します。
※スティクション:磁気ヘッドとプラッタが吸着する現象で、CSS(Contact Start Stop)方式のHDDに見られる現象。

一眼レフの写真や、フィルムをスキャンした写真以外にも、私達が日常手軽に使っているiPhoneなどのスマホやデジカメの中に、写真データが大量に入ったままになっていませんか?

子供や家族、旅行などの写真をスマホのアプリを使ってアルバム代わりに観ている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

貴重な写真データを、長期間失われないように安全に保存するためのアーカイブの方法とは、何なのでしょうか?

 

2.データを保存する器

 

データを保存するための器(データ保存箱)となる媒体や機器、仕組みには幾つかの種類があります。代表的なものについて、それぞれの特徴を順次ご説明します。

 

  1. ① HDD(ハードディスクドライブ)
  2. ② クラウドストレージ
  3. ③ フラッシュメモリ
  4. ④ 光ディスク
  5. ⑤ 長期保存用光ディスク

 

① HDD

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現在ではUSB外付けHDDが代表格です。1TBのものでも1万円前後で入手できます。安価で大容量、高速読み書きが可能、取扱いも容易ですので、写真データのアーカイブに有効な手法の一つです。NASやRAIDなどもHDDを利用した製品群の一つです。使い方や予算に合わせて選択するのが良いでしょう。

※NAS:
Network Attached Storage
TCP/IPに直接接続して使用するファイルサーバー
※RAID:
Redundant Arrays of Inexpensive Disks
複数のHDDを組み合わせてデータの冗長性を向上させる技術を使った外部記憶装置

 

HDDの内部ではディスクが高速で回転しています。
ディスクが回転している際の磁気ヘッドの浮上量は数nm程度しかありません。高速回転を司るスピンドルモーターには流体軸受けが採用されています。こういったHDDの構造上、振動や衝撃に対しては弱いものがあります。また電子部品も多く搭載していますので、水害にも弱い側面があります。
ですので、HDDのみに頼ったアーカイブは避けるべきです。大規模な災害が発生した場合、全てのデータを失いかねません。
HDDの他に、もう一つ他のデータを保存する器を使用する事をおすすめします。

 

② クラウドストレージ

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オンラインストレージと同義語で、ネット上で利用できるストレージサービスのことです。
PCから利用できる無料のクラウドストレージですと、容量が数十GB程度までですので、写真のRAWデータを大量にアーカイブされたい方は、個人向けに大容量を提供しているサービスを利用されるのが良いでしょう。
たとえば、1TB容量を提供している主だったサービスには、dropbox、OneDrive、Google Drive、iCloudなどがあります。月払いで700円台~1300円台の価格帯ですので、気軽に利用できるアーカイブの選択肢の一つとなっています。
2016年7月には、Amazonの容量無制限「Unlimitedストレージ」なども登場し、しばらくはクラウドストレージ市場の動向から目が離せません。
クラウドストレージについては比較サイトが多数ありますので、詳しくはそちらを参照してください。

一度クラウドにアップロードすれば、様々なデバイスからファイルの共有ができ、場所を問わずいつでもアクセスが出来るという便利さが人気であり、これがクラウドサービスの最大のメリットです。利用前にソフトウェアのインストールが必要な場合もありますが、比較的簡単な操作でインストールができます。
大きなメリットの反面、気を付けないといけない点が二つあります。
一つはデータの流出です。
最近ではハリウッド女優のプライベート写真の流出、日本年金機構からの情報流出などが記憶に新しいところです。これらのケースは、クラウドサービスの提供元の問題ではなく、フィッシング詐欺や、コンピュータウイルスによる不正アクセスであると言われていますが、一度ネットに画像が流出すると、このように取り返しがつかない結果となってしまいます。流出したことが分かればまだ良いほうで、流出した画像がパブリックスペースになければ、検索サイトで画像検索しても引っ掛かりません。つまり流出の事実を知らずに過ごすという可能性もあり得るのです。
もう一つ注意すべきはクラウドサービスの継続性と利用規約の確認です。いきなり数ヵ月後にサービスを停止される可能性もありますので、注意が必要です。
また、利用規約の確認ですが、グーグル社のサービス利用規約が問題視されていた時期がありました。ユーザーがコンテンツをアップロードするとグーグル社に対して、所有権など全世界的なライセンスを付与することになる、というものでした。
この件は既に決着を見ていますが、大切な写真データです、クラウドサービスを利用される前に必ず利用規約を確認されることをおすすめします。

 

③ フラッシュメモリ

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半導体メモリの一種で、電気的にデータの消去や書き換えができる不揮発性メモリのことで、NAND型フラッシュメモリが主流になっています。
USBメモリ、SDカード、SSDなどの種類があります。
可搬性に優れているだけでなく、既に512GBや1TBのUSBメモリも存在しており、データを保存する容量としては申し分ありません。
しかし、データの一時的な保存には向いているものの、アーカイブ用の器としてはおすすめ出来ません。

静電気に弱い、書き換え回数に上限があるという話しは良く知られています。
静電気については、取扱いに注意していただくしかありません。
書き換え回数についても、頻繁に書き換えをするような使い方をされない限り、ウェアレベリングの効果もあるためそんなに気にする必要は無いはずです。

※ウェアレベリング:データの書き換えが特定のセルへ集中しないようにする仕組み

アーカイブ用として長期保存に適さないと言われる所以は、データの保持期間が、フラッシュメモリの構造上有限であるからです(データ保持期間は一般的に5~10年と言われています)。
フラッシュメモリの記事の中で、データの自然消失、データの自然蒸発という言葉を目にします。これは、フラッシュメモリの構造上の特徴であるフローティング・ゲートから、無通電時であってもトンネル効果によって電子が漏れ出し、10年という長い期間が経過するとデータが消える危険性があるというものです。
つまり一度フラッシュメモリにデータをアーカイブした後、大事なものなので自宅の金庫の中に保管しておいたは良いが、10年後に見ようとしたら見られなくなってしまった、という事態が発生する可能性があるという事です。

 

④ 光ディスク

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データの記録が可能な光ディスクにはいくつかの種類、形式の違いがあります(表を参照)。追記型は一度だけデータを記録できるもので、データの書き換えや消去は出来ません。書き換え型はデータの書き換えは可能ですが、フラッシュメモリ同様書き換え回数に上限があります。

 

追記型 書き換え型 容量
CD-R CD-RW 650/700MB
DVD-R,DVD+R DVD-RW,DVD-RAM,DVD+RW 4.7/8.5GB
BD-R※ BD-RE※ 25/50/100GB
※BD:Blu-ray Disc(ブルーレイディスク)の略称

光ディスクの良いところは以下の点です。

  • ・フラッシュメモリと同様、可搬性に優れている。
  • ・年間3億台の光ドライブが生産されており、記録再生環境に困らない。
  • ・災害に強い堅牢な媒体。水に濡れたり汚れても、水洗いして乾燥させれば大抵はデータが読める。
  • ・追記型は意図的な消去や上書きが出来ないので、データの安全性が高い。
  • ・静電気に強く、保存中の通電も必要ない。

逆に光ディスクの欠点はデータ容量が少ない点と、HDDやフラッシュと比較するとデータ転送速度が遅い点です。
このような欠点はあるものの、総じてアーカイブの器として適しているように思えますが、フラッシュメモリと同様に長期保存にはおすすめ出来ません。

記録済みの光ディスクからデータが読み出せる期間、つまり寿命は何で決まるのか。
これは光ディスク自体の性能と、記録に使用した記録ドライブの組み合わせによって決まります。よく言われる「相性の良し悪し」があるのです。
よって、同一メーカーの同一型式のディスクを別々の記録ドライブで記録した結果、片方はわずか半年程度で読めなくなるのに、もう片方は10年以上読める状態を維持しているディスクになる、ということが発生するのです。
では、ディスクと記録ドライブの最適な組み合わせを見つければ良いのかというとそう簡単ではありません。同じ型番のディスクであっても、購入する時期によってその中身は異なる場合があります(ある時はA社製造品、ある時はB社製造品)。
また、最適な組み合わせであることを検証するには専門の知識と設備が必要になるため、最適な組み合わせを発見・維持することは事実上不可能です。

 

⑤ 長期保存用光ディスク

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一般市販されている光ディスクとは異なり、アーカイブ用に開発された長期保存用光ディスクというものがあります。全て追記型の光ディスクで、書き換え型はありません。
前述のとおり、光ディスクには相性問題があります。しかし長期保存用光ディスクでは、その相性問題がありません。
それは、長期保存用光ディスク専用の長期保存用記録ドライブが存在するからです。この長期保存用記録ドライブで記録することで、BD-Rだと推定寿命200年のディスクを作成する事が出来ます。
記録の際には長期保存用記録ドライブが必要になりますが、再生する際は市販のドライブで大丈夫ですので、すぐに再生環境に困るような事にはなりません。

では、一般市販されているディスクや記録ドライブと何が違うのでしょうか?
ディスクは長期保存に適した記録膜を採用し、寿命測定とディスク面内の欠陥検査を全数実施した品質の高いものとなっています。
ドライブは、この長期保存用光ディスクに最適な記録条件で記録するよう設計されています。また市販のドライブですと可能な限り早く記録を終えるように、最高の倍速で記録しようとしますが、この長期保存用記録ドライブは最高の記録品質を保つため、4倍速一定の線速度で記録を行います。その結果、ZCLVやCAVの速度切り替え位置での記録品質の低下という問題も発生しません。

しかし推定寿命200年と言うが、200年後どころか100年、いや30年後には光学ドライブは世の中に無いのではないかという質問があろうかと思います。
確かに30年後には光学ドライブは市場には無いでしょう。それどころか15年後には光学ドライブの流通量がかなり少なくなり、今のFDD(フロッピーディスクドライブ)のような状況になっているかも知れません。そのような状況になった場合、新たに別の媒体にアーカイブをし直す必要があります(これをマイグレーションと言います)。
では200年の意味は何かと言いますと、「安心」であるという事です。
それだけの長い期間の保存が可能だというバックデータがあるのであれば、例えば15年後に他の媒体にマイグレーションする際にも、十分に読み込み可能なレベルのままで居てくれるという事です。

 

3.おすすめの長期保存方法は

100%安全な保存媒体はありません。
だからこそ二重、三重にデータをアーカイブする必要があります。
また長期保存が前提ですからその際に気を付けなければならない事は、特殊なものは避けたほうが良いという事です。ある会社が潰れたからもうデータが読めなくなった、などという事態にならないようにすべきです。

そのうえで、大切な写真データを確実に保存するお勧めの方法は・・・

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・HDD

・長期保存用光ディスク

この二つを併用することです。

まずHDD。
高速大容量で、インターフェースも標準的なSATAやUSBですから安心です。
将来的には更なる大容量化も期待できます。
NASやRAIDにしても良いですが、それは必須ではありませんので予算の範囲内でという事で良いかと思います。
HDDは高速且つ使いやすい媒体ですから、アーカイブしたデータを日常的に活用するためのデバイスとして使用します。
HDDに長期保存性を求めてはいけません。あくまでデータの活用目的です。

次に長期保存用光ディスク。
容量はBD-Rで100GBと少なめですが、何よりも優れた長期保存性能の高さです。また、光ディスクのファイルフォーマットは国際規格のUDFですし、再生するためのドライブも世の中に多数存在していますから、再生環境の面でも安心です。長期保存用光ディスクは、データを記録したあとは金庫や棚、机の引き出しなどに保管しておきます。日常使うことはありません。
長期保存用光ディスクに活用性は求めません(データ転送の遅さにイライラするだけです)。あくまで長期保存が目的です。
アーカイブしたデータが入ったHDDに故障が発生した場合に、長期保存用光ディスクからデータを新たなHDDにコピーする、マイグレーションの時期になったら長期保存用光ディスクから新たな媒体にデータをアーカイブする、それが長期保存用光ディスクの役割です。