Archiveアーカイブ

光ディスクの寿命(保存性能) – 前編

長期保存用光ディスクがどのように誕生したかをご紹介しています。寿命推定と製品認証は、信頼のおける第三者機関が行っています。

今回は、追記型Blu-ray Disc(以下、BD-R)の寿命に関してお話しをさせて頂きます。

1. 長期保存用光ディスクの誕生

弊社は光ディスクメーカが言い難いことを言い切ります。「BD-Rを含む記録型光ディスクの寿命は、メーカや固体差はありますが、一般的に5~10年程度の寿命」しかありません。この程度の寿命性能では、光ディスクで大切なデータを保存できませんね。しかしながら、市場要求として「使い慣れた汎用メディア(CD-R/DVD-R)で大切のデータを保存したい」との声が高まり、CD-R/DVD-Rの寿命試験方法である国際規格ISO/IEC10995※1,16963の試験をパスした長期保存用CD-R/DVD-Rが商品化されました。メーカ独自の試験方法ではない国際規格に基づく寿命試験方法であることに加え、光ディスクで電子化文書を長期保存する方法「JIS Z 6017※2」に準拠したDVDドライブと光ディスク検査装置が発売され、また同時期に光ディスクの寿命期間を認定する第三者機関(後ほど説明)が設立されたことで、粗悪な光ディスクと寿命特性の良い光ディスクを見分ける仕組みができ、寿命特性の良い光ディスク(長期保存用光ディスク)が市場で認知されました。しかし、撮影機材等の高解像化が進むにつれデータ容量は拡大し、市場要求は「大容量のBD-Rでデータを保存したい」に推移していきました。

※1:ISO/IEC10995
2008年に制定されたDVD-Rの保存性能を示す国際規格。通常の保存環境より厳しい環境にて光ディスクを一定期間保管し、その期間においてディスクの基本性能が変化しているかどうかを調査する加速試験を行い、その結果を元に光ディスクの製品寿命(保存性能)を推定する規格。

※2:JIS Z 6017
電子化データの記録媒体として、長期間にわたる記録保存が可能な互換性に優れた光ディスクが対象となっている。JIS Z 6017は2006年に制定後、データ量の増加を背景に、2013年BD-Rでの電子化データの長期保存運用方法として改定された。詳しくは下記アドレスを参照。
http://www.meti.go.jp/press/2013/09/20130920001/20130920001-3.pdf

 

2. BD-Rの寿命特性

2015年、ISO/IEC16963※3にBD-Rの寿命試験方法が加えられました。このBD-Rの寿命試験方法を加える活動に、光ディスク評価機関としてアルメディオもお手伝いをさせて頂きました。

寿命試験は光ディスクにストレスをかけて寿命を推定しますが、アルメディオはストレス条件を導き出すお手伝いを致しました。ストレス条件を導き出すことは大変難しく、時間と労力を費やしました。

・ストレス条件が厳しいと、試験時間は短縮できるが、破壊試験になり兼ねない。

・ストレス条件を緩くすると、試験時間が長くなるだけでなく、試験が完了しない可能性がある。

計画より遅れたものの、実験を繰り返した末「正確、且つ最短時間で試験ができるストレス条件」を見つけ出すことができ「ISO/IEC16963にBD-Rの寿命試験方法を加える事ができた」と自負しています。

「最短時間で寿命試験が出来る」この目的は、生産ロット毎に寿命試験を実施し、試験に合格したBD-Rのみを「長期保存用BD-R」として、信頼と共にお客様にお届けする事にありました。国家レベルの重要なデータを保存して頂いている媒体ですので、これは至極当たり前の事ですが、メーカ及び弊社は「期待寿命200年以上のBD-R」と銘打ち、自信を持って販売させて頂いている背景がここにあります。

詳しくは三菱化学メディア株式会社のウェブサイトをご参照下さい。

http://www.mcmedia.co.jp/enterprise/characteristic.html

※3:ISO/IEC16963
長期保存用光ディスク媒体の寿命推定のための試験方法で、ISO/IEC10995(DVD-Rの寿命推定方法)と、ISO18927(CD-Rの寿命推定方法)が統合され2011に制定された。ISO/IEC16963の基本的な考え方はISO/IEC10995と同じである。現在は2015年にBD-Rの寿命推定方法が加わったものが最新の規格となっている。

column09_01

3. 光ディスクの寿命推定試験を行う第三者機関

公平な立場で光ディスクの寿命推定試験を行う第三者機関が存在しています。

国際規格に基づき試験したと言っても、自社試験結果って「信頼性が?」と感じる時はありませんか? 私はひねくれているのか「大丈夫?」と感じることがあります。しかし、光ディスクの寿命試験は、信頼のおける第三者機関である特定非営利活動法人アーカイヴディスクテストセンターの認証試験を実施しているので安心です。とは言ったものの、弊社には私以上に疑い深い社員が多くおりますので、自社でも寿命試験を実施しています。

特定非営利活動法人アーカイヴディスクテストセンターの取組みは下記ウェブサイトをご参照下さい。

http://n-adtc.org/index.html

 

4. アーカイブ用光ディスク製品認証制度

長期保存用BD-Rは、長期保存を目的に設計され、厳しい品質管理のもと生産されていますので、優れた保存性能を有しています。しかしながら、「疲れたBDドライブ」や「相性の良くないBDドライブ」で長期保存用BD-Rに記録しても、さすがに保存性能は落ちてしまいます。相性の良いBDドライブとBD-Rの組合せを探し出すことは困難ですし、また探し出したとしても、モデルチェンジや生産工場の変更等、変化は多岐に渡りますので、相性の良い組合せを使用し続ける事は難しいです。BD-Rに記録されたデータの保存性能は、「BDドライブとBD-Rの相性」と言う曖昧な言葉だけでは解決できない、奥深い関係があります。BD-Rでデータの長期保存性を考えるには、長期保存用BD-Rに記録特性(寿命特性)が最適化された制御プログラムが搭載され、良好な記録品質(寿命特性)が確認された専用のBDドライブ(長期保存用BDドライブ)の使用をおすすめ致します。簡単に申し上げると、BD-Rでのデータの長期保存は、長期保存用BD-Rのパフォーマンスを最大限に引き出すBDドライブをご使用頂ければ安心と言うことです。且つ、長期保存用BDドライブの安心機能として、外部からの記録速度等の記録品質に影響のある命令をスルーし、長期保存に最適な品質で記録する仕組みになっていますので、誰でも簡単に「期待寿命200年以上の品質」でデータ記録を間違いなく行えます。尚、再生に関してはドライブを選びませんのでご安心ください。

長期保存するための光ディスクドライブと光ディスクの組合せに関しては、第三者機関である公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が担っており、既に「アーカイブ用光ディスク製品認証制度」がスタートしています。詳しくは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会のウェブサイトをご参照下さい。

http://www.jiima.or.jp/certification/index.html

 

5. 結論は

column09_02

長々と書きましたが、結論は

「電子データの保存は、長期保存用BDドライブで、長期保存用BD-Rにデータを記録すれば、電子データは安心して長期保存できる」

と言うことです。

次回のコラムはこの続編です。保存性能は媒体の構造に起因する要因も大きいため、実験結果をご紹介しながら、媒体構造から見た保存性能のお話しや、再生環境等に関して書かせて頂く予定です。