Archiveアーカイブ

あなたのコールドデータは何ですか?

データは分類することで賢く保存できます。あまり使う事がない、でも無くなっては困るデータの最適な保存方法をご紹介します。

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数年前、アーカイブ用としてSMR方式のHDDが登場した時には、エンタープライズ向け製品だと思っていましたが、一般の方も結構購入しておられるようですね。容量8TBで3万円を切る実売価格の製品などは、ギガバイト単価も安いですから確かに魅力的です。

このSMR方式のHDDにデータを保存しておけば、アーカイブは完璧なのでしょうか?

1.SMR方式HDDって?

通常HDDは同心円状にトラックが配置されており、そのトラック内にあるセクタ単位に記録をしていきます。トラック間には一定の間隔があり、トラックが重なる事はありません。ところがSMR方式(Shingled Magnetic Recording)のHDDは、トラックがわざと重なるように記録していきます。屋根瓦のように重ねながら記録していくイメージです。こうすることで記録密度が上がり、HDDの記録容量を増やすことができるのです。

ではSMR方式は良い事ばかりかと言うとそうではありません。トラックを重ねて記録しますから、ランダム書き込み時の性能が低下します。複数トラックを一つのブロックとして、ライトする場合はその1ブロック分をまず読み出し、変更すべき箇所のデータを変更した後、1ブロック分のデータを書き換えます。このように複数トラック分の読み出しと書き込みが発生するために性能が低下するのです。

ですので、HDDでありながら頻繁に書き換えが発生しない用途に向いています。例えばバックアップやアーカイブ用途です。データセンターにおけるコールドデータの保存にも適しています。一般の方の用途も、蓄積したデジカメの静止画や動画の保存、様々なデータのアーカイブ、NASのバックアップなどが多いようです。

どなたかがSMR方式のHDDを『HDD-R』と表現されていましたが、まさにぴったりのネーミングですね。

2.データの分類

一般的に保存されているデータは以下のように分類されます。

ホットデータ:頻繁にアクセスされるデータ。

ウォームデータ:アクセス頻度が低いデータ。バックアップしたデータ等。

コールドデータ:ほとんど使用又はアクセスされないデータ。

 

私たちが日常的に使っているSNSのデータもそうです。facebook、Instagram、Twitterに投稿した写真などは、日を追うごとにホット→ウォーム→コールドと移っていきます。

では、一般のご家庭でのコールドデータって何でしょうか?

何年も前に撮った写真データやハンディカムで撮った動画、手持ちの音楽CDのバックアップデータ、過去のOffice文書やPDFなどではないでしょうか?

普段はほとんど使用することはありません。ふと思い出した時にアクセスするようなデータですが、それでも絶対に消えては困るデータですよね。

 

あなたのコールドデータは何ですか?

3.コールドデータを保存する要件

コールドデータを保存する要件は、長期保存の信頼性があり、大容量である事、低消費電力である事です。HDD、LTOに代表される磁気テープ、長期保存用光ディスクなどが有力なデバイスです。一般のご家庭であれば、HDDか長期保存用光ディスクが現実的な選択肢ではないでしょうか?

しかし容量が増え過ぎると被害も甚大という例が以下の記事です。SMR方式のHDDが2台吹っ飛んだお話しですが、この方は幸いにもデータはほぼ復旧できたようです。しっかりとBD-Rにもバックアップを取られていたのです。

 

8TBのハードディスク2台が吹っ飛んだ ~その傾向と対策~ 前編

http://app-review.jp/news/297122

8TBのハードディスク2台が吹っ飛んだ ~その傾向と対策~ 後編

http://app-review.jp/news/297147

 

最近ではヘリウムを充填し、通常の垂直磁気記録方式(PMR: Perpendicular Magnetic Recording)で10TBというHDDも登場しています。どんどん大容量化していくHDDですが、この例のようにHDDはいきなりクラッシュする事がありますので、そのデータのバックアップやアーカイブは必須です。

一方の長期保存用光ディスクですが、BD-Rでは50GBと100GBの2種類があります。HDDに比べれば容量は少ないですが、良いことはたくさんあります。

何より推定寿命200年という長期保存性能。記録後はご家庭の居室環境でディスクを保管するだけですから電力消費もありません。

更に良い点として『思い出が蘇える』ことです。以下は筆者の例です。

HDDの中にある過去の写真データをイベント毎に整理してBD-Rに記録し、ディスクのレーベル面に「xx年xx月 ○○鉄道旅行」のようにイベント名を印字しておきます。

これを正副2枚作ります。正の1枚は長期保存用BD-Rに記録して、別室の棚に保管しておき、副の1枚は市販のBD-Rに記録してリビングに置いています。イベント毎にまとめる際にフルHDの動画も含まれることが多いので、BD-Rの容量でちょうど具合が良いのです。

今までは撮り貯めるばかりで、あまり再生されることのなかった写真データですが、イベント毎に作成されたディスクが居間に何枚もあれば、ついつい手を伸ばして見ることになり、家庭での楽しみが一つ増える結果となりました。

またこうしておけば、HDDがクラッシュしても大丈夫です。別室の棚には推定寿命200年の長期保存用BD-Rが残っているのですから!